日本鏡餅組合

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一年の計は元旦にあり 新しい年が明けることで、気持ちが引き締まる元旦。「一年の計は元旦にあり」といわれるように、日本人は一年の節目である正月を、ことのほか大切にしてきました。お正月には年神様という新年の神様が各家庭に降りてくると考えられ、その幸運を授けてもらうために、さまざまな習慣が定着しました。時代が変わっても受け継いでいきたい、正月行事の習慣をご紹介します。

鏡 餅

年神様の神秘な力を象徴

鏡餅の丸い形は心臓を象徴化したものといわれ、年神様に力を借りて魂の再生を図ったと伝えられています。昔は鏡餅とともに大根、かぶ、押し鮎、鹿肉などを食べていたようですが、次第に食べるものから眺めるためのものとなりました。これが床飾りとしての鏡餅の始まりだといわれています。
神に供えられた鏡餅を鏡開きの日に割って頂くことで、神の霊力とつながりが生じると考えられています。

初日の出

一年の幸運を願い手を合わせる

年神様は大晦日の夜にやってくるといわれています。元日の朝はその年の最初に昇ってくる太陽を拝みます。一年の幸運を祈るために、いまでも多くの人々が見晴らしのよい所に出かけます。
初日の出を拝む場所は眺めのよい山、海岸などさまざまですが、特に高い山頂で迎える太陽を「ご来光」といいます。山頂近くの雲に映った自分の影が、まるで光の輪を背にした仏の像のように見え、仏の「ご来迎」との語呂合わせで呼ばれるようになったといわれます。

初 詣

年が明けたら神社や寺へ

新年を迎えて、初めて神社やお寺におまいりに。これが初詣です。年の初めにお参りすると「めでたさ」が倍加するといわれ、元日の朝早くから各地の神社・仏閣は初詣する人で賑わいます。絵馬に願い事を書いて奉納したり、お守りや破魔矢を受けたりします。なお、大晦日に除夜の鐘を聞きながら家を出て、元旦にお参りをすませて帰るのを「二年参り」といいます。

門 松

年神様が迷わないための目印

新しい年を祝い、山から降りてくる年神様がいらっしゃる印として玄関前や門前に立てるのが門松です。門前の左右に一対並べるのが一般的で、玄関に向かって左側の門松を雄松、右側を雌松と呼びます。
松が飾られるようになったのは、古くから神が宿る木と考えられているからです。門松をたてておく期間は、一般的には1月7日までの「松の内」の間とされています。

注連縄(しめなわ)・注連飾(しめかざ)り

神聖な場所から災いを防ぐ

注連縄はもともと、神聖な場所と不浄の外界を区別するための縄。神様を祭る神聖な場所であることを示しています。注連縄や注連飾りは一夜飾りを避け、外す日は地方によって異なります。

年越しそば

細く長く、長寿を願う心

大晦日の晩に食べるのが年越しそばです。そばは細く長いことから「長生きできますように」の願いを込め、金銀細工師が金粉を集めるのにそば粉を使ったことから、そばは「金を集める」縁起物として広まったともいわれています。また薬味のネギは、疲れをねぎらう意の「労(ね)ぐ」、祈るという意の「祈(ね)ぐ」、おはらいしたり清めたりする神職の「祢宜(ねぎ)」などの言葉にかけて用いるとか。一年間の頑張りをねぎらい新年の幸せを願いながらいただきます。

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新谷 尚紀
(しんたに たかのり)

民俗学者(社会学博士)、
1948年広島県生まれ。
早稲田大学第一文学部史学科卒業、同大学院史学専攻博士課程修了。
国立歴史民俗博物館教授・総合研究大学院大学教授。
おもな著書に『神々の原像』吉川弘文館、『日本人はなぜ賽銭を投げるのか』文藝春秋、『日本人の春夏秋冬』小学館、『ブルターニュのパルドン祭り』悠書館、『お葬式−死と慰霊の日本史−』吉川弘文館、『伊勢神宮と出雲大社−「日本」と「天皇」の誕生』講談社、など。